第96回 マイナンバーカード(3)併用機能

マイナンバー制度は3つの仕組みから構成されている。

1つは番号制度そのもの、つまりマイナンバー(個人番号)である。これは税と社会保障(災害対応も追加)の分野で行政機関が利用するものである。名寄せによる税や社会保障の公平性を維持するための共通番号である。税や社会保障業務の前処理をして行政の処理をサポートするために企業がマイナンバーを利用する。その取り扱いには厳重な安全管理措置を講じなければならない。

2つ目がマイナンバーカード(個人番号カード)の機能である。マイナンバーを確認するために、表面は顔写真と住所、氏名、生年月日、性別の4情報を記載、裏面に当人のマイナンバーの12ケタの数値が記載されている。表面は国が発行する身分証明証でマイナンバーの本人確認のために利用される。しかし、もっと強力な機能は公的個人認証機能を内蔵していることで、マイナポータル利用をはじめ、オンライン通販やオンラインバンキングなどの民間のインターネットビジネスの加入者確認にも使える。さらにマイナンバーカードのIC記憶領域に別の証明証やカード機能を収容することができる。これは後段で説明する。

3つ目がマイナポータルである。電子行政の国民への窓口になる。将来は確定申告や納税に使ったり、行政が自分のマイナンバーをどのように使っているか、個人情報の自己コントロール権の実現手段になる。

この3つの機能は別々のものである。混同しないできちんと理解しておいてほしい。

今回は、2つ目のマイナンバーカードについて立ち入って説明する。

表面に氏名と顔写真が記載されているので、ICの領域を利用して、現行の身分証明証と一体化する使い方が提案されている。公務員の身分証や企業の社員証、学校の学生証などが想定されている。ただ、マイナンバーとリンクするのではない。現行の社員番号や公務員番号、学生番号はそのまま使い、ICの記憶領域では隔絶された別領域で管理されている。

健康保険証や年金手帳、図書館・スポーツ施設など公共施設の会員証・入館証も一体化することが予想される。運転免許証も内閣府から警察側に一体化することを打診しているが、警察側は同意していない。しかし、カードを何十枚も財布に入れて持ち歩く不便な状況を改善するためには、多くの証明証を一体化してほしいという要求は強い。

さらに銀行カードやクレジットカードも一体化できないか。技術的には可能である。安全性の担保でも問題はないといわれている。

ただ、1枚に収容してしまうと、盗難や置忘れなどで紛失した場合、その情報がいっぺんに失われるリスクを抱えることになる。どこかにバックアップする仕組みが欲しくなる。それも新しいビジネスになるだろう。前回に記したように「サブカード」という考え方も実現するかもしれない。

マイナンバーカードはまだ、いろいろな可能性が検討されている。新しい高度情報社会が利便性の高い社会になることを期待したい。


【 筆者=JAPiCO理事長 中島洋 】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization